或る授業風景

 彼は盛んにどもりながら答え続けた。「朝鮮侵略」と言いかけて「朝鮮出兵」と言い直し、あのーあのぅと6回も繰り返した。そして満足のいく回答をし終えると、彼は誇らしげに目の前のペットボトルを開け、彼の他の愚鈍な生徒のために補足を述べる教授の後姿に、てらてらと油に濡れたような瞳を向けるのであった。一方、僕は前に座る女の子の背中に雑作なく広がった髪の毛を見ていた。黒いカーディガンの上に磁力線のように円やかに散らばる、ドライヤーに灼けた髪をした女の子は、ピンクの携帯電話を握ってずっと下を向いていた。

2005-11-22 (Tue)

文責:えっぴ〜