内藤の話 - 毒男パート

 鷺沢タケシはいつも一人でいることを好んでいた。消去法的にその性向が培われていったのが、彼にとってもっとも心楽しかった大学での数年間であることは間違いなかった。その数年間のうちにタケシは多くの元友人たちと自然に疎遠となるとともに、内藤カケルという一人の友人と懇意になり、一つのコミュニティにどっぷりと浸かりこんだ。内藤は何かあるとすぐにタケシを遊びに連れ出した。時々は二人で、時々はよく見る連中と一緒に、時々は内藤の知り合いの女の子たちと一緒に。
覚書、続きを書くとき用に。書かない可能性も高いが。
(タケシは自分に絶望していたのをカケルに救われたと感じていた。馬鹿騒ぎをして過ごしたその大学生活を一種の貯金のようにして、今はそれを食いつぶしながら生きているのではないかと時折錯覚思想になることもあった。彼自身、カケルによりかかりすぎていたという気はしていたが、しかしそうでもなければ自分はもっと破綻していた生活を送っていたのではないかとも思い、カケルには主に感謝の念が強かった。だが実際はカケルはタケシに「一人で歩いて行く力が彼自身の中にも存在している」ことも含めて伝えており、むしろ今のタケシの状態は分かっていながら知らないフリをして楽をしているような状態であった。ありていに言えば、宗教の信者になりきっているような、そんなところだ。)